「新宿駅も高松駅も、同じご近所感覚です」子育てと介護を終えた60代主婦が見つけた、『おてつたび』で広がる新しい日常と全国の“帰れる場所”

子育てが一段落し、ご両親を見送って介護もひと区切り。ふと手元にぽっかりと空いた自由な時間を、どう過ごしますか?

東京都にお住まいの佐方なおこさん(62歳)は、若い頃に旅行会社で働き、その後はカスタマー部門などで長くお客様と接してきました。大の乗り物・温泉好きでもある佐方さんが、セカンドライフの新しい楽しみとして見つけたのが、地域で少し働きながら滞在する『おてつたび』でした。

最初は「若い人たちのためのサービスなのでは」と不安を抱えていたものの、思い切って一歩を踏み出してからの3年間で、参加回数はなんと通算17回。山形県の銀山温泉や肘折温泉、徳島県の鳴門など全国各地へ足を運び、すっかりお馴染みとなってリピート参加するおてつたび先のお宿もあります。

大好きな鉄道や温泉を訪ねる旅から、全国に「またおいで」と迎えてくれる大切な人ができる旅へ。60代から始まった新しい出会いと体験が、これからの暮らしや心にどんな変化をもたらしていったのか、お話を伺いました。

──まず、おてつたびに応募されたきっかけを教えていただけますか?

佐方さん: 最初、友人から「お手伝いしながら旅ができるサービスがあるよ」と聞いたんです。そのあとテレビの特集でも見たんですけど、出てくる方が若い女性ばかりだったので、「ちょっと私とは世界が違うかもしれないな」って最初は引いてしまっていました。

でも、ネットで口コミを見ていたら、50代や60代の方もチラホラいらっしゃって。「もしかしたらできるかもしれない」と思ってずっと見ていたんです。

そんなときに目に入ったのが、福島県昭和村の旅館の募集でした。私、乗り物に乗るのが昔から好きで。特に新潟と福島を結ぶ「只見線」の景色が大好きだったんです。以前旅行で乗ったときは一瞬で通り過ぎてしまったので、「あの素晴らしい景色の場所に長くいたいな」と思って。2週間という期間も、主婦として家を空けるにはちょうど良かったので、不安よりも「行きたい!」が勝って思わず申し込みました。

車で山道を進みながら「どこまで行くん? ここどこ!?」って思わず声を上げた日のことは、今でも覚えています(笑)。「本当に私で大丈夫かしら」って、直前までずっとドキドキでした。

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おてつたび思い出の地・山形県銀山温泉

──初めての現場での作業や、慣れるまでに意識されていたことはありますか?

佐方さん: やっぱり最初の3日、4日は大変でした。泊まる場所も初めてだし、仕事も初めて。覚えるのもだんだん苦手になってきているので、教わったことを忘れないようにしっかりメモを取りました。あとは、わからないことはどんどん聞いて、自分からコミュニケーションを取る努力をすること。ちょっと怖そうな感じの方がいても、怯まずに聞きに行きましたね。

でも、向こうも「素人が来る」って分かってらっしゃるので、本当に丁寧に教えてくださるんです。段々と仕事の流れが分かってくると楽しくなってきて、帰る頃には「またやりたい!」って思っていました。

昔はお金を稼ぐために働かなければいけない感覚が強かったんですけど、今は「誰かの役に立っている」と実感できることが何より嬉しいんです。お客様から「ご飯が美味しかったよ」なんて言っていただけると、自分が作ったわけじゃないのに嬉しくなっちゃって。そういう反応が返ってくるのが楽しいですね。

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元河原湯の女将さんと、一緒に働いたおてつたび参加者との写真

──佐方さんは同じおてつたび先に何度も再訪されているそうですね。

佐方さん: そうなんです。17回の参加の中には、同じ場所に2回、3回とリピートして行ったところもあります。一度行った場所は、どんな方が迎えてくれて、どんな仕事をするか分かっている安心感がありますし、何より「あの人たちにまた会いたいな」という気持ちになるんです。

山形の温泉旅館にお邪魔したときは、皆さんがすごく明るくて温かくて。仕事は私にとって少しハードだったんですけど、「冬はすごい雪景色だからまたおいで」「じゃあ春ね」なんて声をかけていただいて、本当に季節を変えて3回も行ってしまいました。

銀山温泉の旅館に2回目の参加で伺ったときも、玄関を開けた瞬間にスタッフの方が「おかえりなさーい!また会いに来てくれたの?」って飛びっきりの笑顔で迎えてくださって……。もう、涙が出そうなくらい幸せでした。

1泊の旅行だと、表面をさらっとなぞるだけで終わってしまって。でも2週間一緒に働いて、お茶を飲んだり世間話をしたりしていると、家族みたいになれるんです。おてつたびを始めてから、遠かった全国の街がぐっと近くなって、どこへ行っても「また帰れる場所」があるって思えるようになりました。

▼佐方さんのおてつたび密着映像

──お仕事の合間の「中抜け時間」やお休みは、どのように過ごされているんですか?

佐方さん: 旅館のお仕事は朝と夕方が中心なので、日中に「中抜け」の自由時間があります。

近くのお土産屋さんを見たり、カフェに行ったり、日帰り温泉に入ったり。お部屋で静かに英会話の勉強をすることもあります。家にいるとどうしても家族に気を使ったりしますけど、この時間は100%自分だけの時間なので、すごく贅沢なんです。お休みがまとまって取れたら、現地からさらに別の温泉地へ1泊旅行に行ったりもします。

おてつたびでいただいたお給料で美味しいものを食べて、足を伸ばして別の旅も楽しむ。いただいたお金をその土地や周辺で使って帰るという、自分の中で「お金と体験の循環」ができているのも、すごく心地いいです。

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徳島県・鳴門海峡の渦潮を観光
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阿波踊りを楽しむ佐方さん

──おてつたびを始めてから、佐方さんご自身の生き方や考え方に変化はありましたか?

佐方さん: 私の中の距離感がすっかり変わってしまいましたね。私にとっての新宿駅と、四国の高松駅の認知度が同じくらいになっちゃったんです(笑)。高松駅なら「スーパーで買い物するならあそこに行けばいいや」ってパッと浮かぶ。全国にご近所が増えた感じで、本当に楽しいです。

実は今年、伊豆の方へ引っ越そう(移住しよう)と思っているんです。東京の家は両親を見送ってから住む意味があまりなくなってしまったし、周りに知り合いもいなくて。だったら両親が残してくれた伊豆の家に行って、お庭を整えたり、家の中を好き勝手改造して楽しもうかなって。

昔の自分だったら、そんな大きな決断はできなかったかもしれません。でもおてつたびで「飛び込んじゃえば、やればなんとかなる!」と思えるようになったから、ポンと一歩を踏み出せたんだと思います。伊豆は温泉もありますし、おてつたびの募集も多い地域なので、引っ越してからも近場のおてつたびに行ったりしたいですね。

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おてつたび参加者同志の交流もたのしみのひとつ

──最後に、参加を迷っている同世代の方へメッセージをお願いします!

佐方さん: 周りの友達から「楽しそう!やりたい!」と言われるんですけど、「毎日8時間働けるかしら」って、最初の一歩を踏み出すのが難しいみたいなんですよね。

でも、最初の3日を乗り越えて慣れてしまえば、絶対に「来てよかった」って思えますから。年齢を理由に引いてしまうのは本当にもったいないです。自分の力に合った仕事を選んで、無理のない範囲で参加すれば大丈夫。迷っているなら、ぜひ一度思い切って飛び込んでみてほしいなと思います。

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