「先生は、旅に出ます」37年の教員生活を経て“おてつたび”へ。62歳・元校長が体現する「人・旅・本」のセカンドキャリア

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令和5年度末、校長としての役職定年を迎え、37年間にわたる小学校教員生活に幕を下ろした関根光弘さん(62歳・栃木県出身)。同期の多くが雇用延長を選ぶ中、関根さんが選んだのは、全国各地を巡りながら地域のお手伝いをする「おてつたび」という全く新しいライフスタイルでした。

教え子たちに「学ぶことは楽しい」と伝え続けてきた元校長先生は今、自らが“旅人”にして、“現役大学生”となり、第二の人生を全力で駆け抜けています。定年を迎えてからの挑戦と、現場で得たリアルな学びをご本人の言葉で語っていただきました。

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小学校教職員時代、校長をしていた時の関根さん
目次

37年の教員生活を終え、全く違う世界へ。還暦からの社会勉強

ーー 37年間の教員生活、本当にお疲れ様でした。退職後、なぜ「おてつたび」に参加しようと思ったのですか?

37年が終わって、「次のステップは何しよう」と考えた時に、自分は初めてのものに挑戦することが好きだったので、教育現場から全く離れて、違うことをやりたいなと思ったんです。退職の2年ほど前にテレビ番組で「おてつたび」を知って、現役を引退したらこれに参加して人生の次のステップを探したいと考えていました。

私は小学校社会科が専攻だったこともあり、子どもたちに農業や水産業など、いろいろな仕事についての話を教えてきました。でも、自分では経験していないことばかりなんですよね。だから、もう一回自分自身でも経験して、それをもう一度教育に生かせるだろうし、社会科の教員として自分も経験したいなっていう思いがありました。

ーー ずっと教育現場にいらしたからこそ、外の世界を見たかったのですね。

はい。自分が校長を務める頃から、働き方改革が求められるようになったのですが、その時に元立命館アジア太平洋大学の出口学長が「人が成長するためには、人と旅と本が大切」とおっしゃっていたんです。

これだ、と思いました。

修学旅行に行く子どもたちにも「人が成長するのはね、『人・旅・本』なんだよ。修学旅行に行くために本で調べて勉強しただろ。そして実際に旅をして、見知らぬ土地で見知らぬ人に会ったよね。これがみんなの成長に繋がるんだよ」と伝えてきたんですが、これっておてつたびにも全部当てはまるじゃないですか。

だから最後の離任式の時に、「校長先生は明日から、人と旅と本に会うために学校を離れます」と言ってお別れをしたんです。

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わかめ漁のおてつたびを経験する関根さん

マニュアルのない現場。メモを取り、プロの姿勢に食らいつく

ーー この2年で、京都のキャンプ場、北海道の農家や漁業など様々な現場を経験されました。全く違う職種に飛び込む上で、大変さはありませんでしたか?

基本的にどこもマニュアルがないんですよね。だから、やりながら覚えていくわけです。どの方も丁寧に教えてくださるけど、やっぱり2回3回と同じことを聞くのは嫌だなと思うから、帰って自分でメモをとって、出かける時には復習してから行くとか、そういうことはやっていましたね。

特に大変だったのは、旅館のお手伝いで洗い場に入った時です。たくさんの洗い物が来る中で、置く場所がわからないし、頭がいっぱいになるんです。だから、少し早めに現場に行って復習したり、自分なりの工夫はしました。

ーー 現場の方々の働きぶりを見て、どんなことを感じましたか?

派遣やパートで入られている高齢の先輩方がいたんですが、その1つ1つの振る舞いの中に、プロフェッショナルなものをすごく感じるんです。我々のように時間で雇われていると、ゆっくりやっていればお金が発生するわけじゃないですか。でも、そんなぬるい気持ちでやられている方は全くいなくて。ものすごいスピードで、それも丁寧に見落とすことなく仕上げていくんです。

それはもう、「この仕事に対する誇り」ですよね。そういう方たちにたくさんお会いして、どの仕事も真剣に取り組むということは本当に尊いものだなとプロフェショナルに触れさせてもらいました。

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2年間で合計13回ものおてつたびに参加し、地域でたくさんのプロに出会ったとのこと

家族の温かい理解と、おてつたびを機に本格的に始めた料理

ーー 退職後、長期間家を空けることについて、ご家族の反応はいかがでしたか?

退職の何年か前から「辞めたらおてつたびやりたいな」と思っていたんですけど、最初は妻に「何言ってるの」と軽くあしらわれて終わりでした(笑)。でも、今では心よく送り出してくれています。おてつたび先から送ってもらった現地の特産品を家族で一緒に楽しんだりして、私の繋がりが広がっていくのを一緒に感じてくれているんだと思います。

ーー おてつたびがきっかけで、ご自宅での生活スタイルまで変わったのですね!

そうなんです。実は愛媛のえごま農家に行った後から、私自身、本格的に料理をするようになったんですよ。そこでは雇い主の親方とその友人の方、自分を含めて男3人での共同生活だったんですが、朝は親方の包丁の音で目が覚めて、美味しいご馳走を作ってくれるんです。農家のお父さんたちって料理好きな人が多くて、色々と教えてくれるんですよね。

親方から「この自動調理鍋、いいんだよ」って教えてもらって、後から自分でも同じものを買って家で料理するようになりました。今は旅から家に帰ってからも、朝ご飯を作ったり夕飯を作ったり、結構してますよ。

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山形県真室川町おてつたびにて、頂いた里芋で芋煮を作るおてつびとの共同生活

全国に広がる繋がり。価値観を共有できる仲間との出会い

ーー 現在は愛媛県の牧場にいらっしゃるそうですね。

はい。朝6時半から10時半までと、午後3時半から6時半まで、一輪車に山盛りの餌を積んで牛に与えたり、機械で搾乳をしたりしています。いろんな農家さんと話す中で「若い子も憧れるようだけど、酪農が一番大変なんだよね」と聞いていたので、あらかじめ覚悟して来ました。

最初は一輪車を運ぼうとしてよろけて、スタッフに心配された場面もありましたが、今ではがっちり運べるようになりました。頂いた絞りたての牛乳を自分で調理して飲めるなんて、貴重な経験ですね。

ーー 若い世代の参加者と一緒になることも多いと思いますが、世代間ギャップは感じませんか?

教員として長く子どもたちと関わってきたり、幅広い年齢層の教職員と勤めてきた経験が大きいようです。私は若者たちとも「対等」だと思っているので、先輩風を吹かす感じではなく、一緒に遊んでいるのが好きなんです。だから世代ギャップはそんなに感じないですね。大学を休学して自分探しをしているような若者たちにもたくさん会いました。

おてつたびって、同じ職場で深く繋がっているのとは違う関係性ですよね。何の仕事をしてるかわからないけど、だからこそ自分のことを話したりして、いろんなことを分かり合っていく面白さがあるんです。 それに、おてつたび仲間だと「時間が過ぎるのを待つんじゃなく、何かまだ動けることがあれば動こう」「言われたことを一生懸命やろう」という共通の思いが通じるところがあるんですよね。そういう価値観が近いからこそ、長く付き合いたいと思える繋がりができるんです。

長崎で出会った若者が、これから就職するからって挨拶周りで関東に来た時、「うちに泊まりなよ」って一緒に栃木の家に泊めて。お酒を飲んで、栃木周辺の観光をして、次の目的地に向かう駅まで見送って。そうやって長く付き合いたいと思える繋がりが多いですね。

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数々の出会いが生まれている

経験を次世代へ。現役大学生として目指す児童福祉の道

ーー 現在は通信制大学で学ばれていると伺いました。

はい、大学に編入学したこの2年間、社会福祉士の国家資格をとるために勉強してきました。おてつたびは、その間の社会勉強とアルバイトのような感覚です。

実は大学時代、「本当に教員になるのかな、どうしようかな」と迷っていた時期に、4年間養護施設で学習ボランティアとして子どもたちに関わらせてもらいました。

それは福祉の面からの関わりだったんですが、その施設の子どもたちと関わる中で、「教員って尊いな」という思いをもらったんです。あの子たちとの出会いが、私の37年間の教員生活をずっと支えてくれたと思っています。

学校の教育現場で関わるのと、福祉の面で関わるのとでは「役割の違い」があることをすごく感じていたので、もう一回原点に戻るとしたら、今度は教育からではなく「福祉」の面で子どもたちにもう一回恩返しがしたいなと思ったんです。

おてつたびで現場のプロフェッショナルな思いや技術を見てきたので、いずれ福祉の現場に立った時、子どもたちにいろいろな仕事の話を伝えられるようになったなと感じています。

ーー 最後に、定年後のセカンドキャリアに悩む同世代の方へ、メッセージをお願いします。

おてつたびの募集には、ワイワイしたところから落ち着いたところまで、本当にいろんなパターンがあります。だから、自分に合ったパターンのものを探して、まずは一歩踏み出してみるといいと思います。新たなものに一歩踏み出せば、二歩目、三歩目は非常に歩きやすいなと感じています。

私も今の牧場が3月いっぱいで終わるので、そのあとは47都道府県で唯一行っていない宮崎県に寄るか、九州の知り合いの家に泊まろうかと考えています。

2月に行われた社会福祉士の国家試験に合格し、通信大学もこの3月で卒業です。8月からは児童福祉に関わる仕事に就くことも決まっています。その前の6月には14度目となるおてつたびとして岡山のぶどう園に行ってきます。さらに4月、5月、心躍る募集があればとまだまだ期待が膨らみます。

自分に合ったものを探して一歩踏み出せば、次へとどんどん繋がっていくと思いますよ。


編集後記

37年間の教員生活、そして校長というキャリアを終え、躊躇いなくおてつたびの世界へ飛び込んだ関根さん。

お話してくださる姿からは、「年齢や過去のキャリアにとらわれず、未知の環境に一歩踏み出せば、そこには必ず新しい学びと、心通じ合う仲間との出会いが待っている」というメッセージが伝わってきました。

「人が成長するのは、人・旅・本なんだよ」。

子どもたちに語り続けてきたその言葉を、教員を終えられた今、ご自身が全力で体現されています。

関根さんのように、まずは自分の興味のままに、一歩踏み出してみることで、これからのセカンドキャリアはもっと豊かで面白いものになっていく。

そう感じました。

ぜひおてつたびの募集を覗いてみてください。

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